発売日:2004/5/28
シナリオ:菅野ひろゆき
原画:CARNELIAN

ミステリート 〜不可逆世界の探偵紳士〜

前作、『不確定世界の探偵紳士Rebirth!』 の世界観を引き継ぎ、かつ、前作とは毛色の違ったミステリー作品に仕上がったのが、本作、『ミステリート〜不可逆世界の探偵紳士〜』です。
他にも同じメーカーさんの『十次元立方体サイファー』というソフトをプレイしたことがありますが、「推理を楽しむ」という一点においては、ズバ抜けて本作は出来が良いと感じました。

前作との違い
事件に対するアプローチの仕方が大きく変わっています。
『不確定世界の探偵紳士』は起こった事に関して、何らかの依頼が来て、それを請け負い解決する、という流れ。
実際に興信所にいるような、現実の探偵に近い探偵ですね。
『ミステリート』は、主人公の目の前で事件が起こり、警察に代わってそれを解決する、という流れです。
コナンや金田一のような、漫画的な探偵を描いた物語になっています。

ゲームとしての一番の違いは、プレイヤー自身で推理可能になったということです。
前作にも、部分部分で推理するところはあったのですが、足を使っての地道な捜査と、ハードボイルドな熱い展開がメインで、プレイヤー側に推理を要求してくる場面はほとんどありませんでした。

今回は、暗号を解読する場面が増え、犯人を選択することも必要になってくるので、随分と考えさせられる作りになっていました。
暗号が解けたときや、犯人が分かったときは、本当に気持ちが良いです。
反面、暗号に限っては、解けないと先に進めないので、一度詰まってしまうとかなり苦しい状況にもなります。
とはいえ、悩むのもひっくるめて、このゲームの楽しさでもありますからね。
そこはしょうがないかなと。

前作に引き続き
前作の良かったところが、変わらず引き継がれているのも、嬉しいポイントです。
ゲーム内容が多少変わっても、テキストのカラーは変わらず。
あいかわらず「フッ」と笑わせるのが上手なテキストです。
たとえば女の人の胸元を調べたときに、

【主人公】(結構、大きいんじゃないか?)
【主人公】(無論、ポケットのことだが。)

のような反応があるのですが、このちょっとした言葉遊びが好きですね。
主人公と軽口を交わしているようで、親しみを感じます。
僕は「胸」のことだとばかり思っていたから、一本取られた気がして痛快でした。
推理とは無関係の場面ではありますが、主人公の「切れ者」っぷりを肌で感じることが出来る上手い会話です。
思わず、主人公はプレイヤーの分身であるという建前を忘れて、一目置いてしまいそうになりました。

総評
物語が完結していないことを除けば、かなりの良作。
ボイスが無いことや、セーブ数の不足をはじめとしたシステム周りの使いづらさ。
文句のつけようは、それなりにあるのですが、そのどれもが、あえて文句を言うほどでもないといった感じです。
シナリオ重視の物語でもなく、変なテーマ性もないので、純粋にゲームとして気軽に楽しむことができました。
素直に「面白かった」の一言でクリア後の気持ちを表現してしまえる作品というのも、なかなか珍しいものです。

事件ごとに一区切りになっており、そのつど種明かしがあって、伏線が消化される。
後半部分へのタメがないから、物語が途中で終わっても、続編への期待感だけが残る。
良い意味で軽いゲームだったのかなと思いました。

『サイファー』、『ミステリート』、『探偵紳士』。
3本の中で、1本でもプレイして面白いと感じたなら、残り2本もやって損はないと思います。
本当は、3本の中でどれが一番良かったか書こうと思ったのですが、うーむ……、どうにも決められませんでした。
3本ともが、それぞれに良いところを持っているんですよ。
でも、推理を楽しみたいなら本作がイチオチです。

しかし、それにしても、あのレトロすぎるマップ移動だけは、できればなんとかして欲しかったですね。
せめて、道以外の風景だけでも描いてくれていれば、よかったんですけど。
建物のかわりに四角が敷き詰められてるだけで、ファミコンゲームを彷彿とさせるようなビジュアルだったのがなんとも……(^^;
トイレから戻ってきて画面を見たら、自分がどこを歩いていたのか分からなくなっていた、なんてこともあったくらいです。

と、さすがにそれは言いすぎですが…。
でも、シャレにならないくらいの、おんぼろマップだったのは確かです。
ただ、それでも、ゲームの面白さに影響がないのは素晴らしいことですね。
もしかしたら、僕が気にしなさすぎなだけかもしれませんが……。

written on 2005.07.17

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