「モエかん」の舞台となるのは、太平洋に浮かぶ小さな孤島。
無政府資本国家「萌えっ娘カンパニー」第2563号島のメイド養成所。
所長の主人公は、ワガママで、セクハラ男で、デリカシーがなくて、おまけに仕事をサボってばかり。
でも、実は元凄腕のエージェントで、ナーサリークライムとか呼ばれる能力者で、けっこう男前。
そんな主人公が、メイド達と過ごすのんびりとした日常から、しだいに国家レベルの陰謀に巻き込まれていくというお話です。
有無を言わさぬ説得力
ゲーム開始間もなく流れるテロップ。
「無政府資本国家」
「萌えっ娘カンパニー」
「第2563号島」
「Killing my business・・・and business is good!」
「萌え買い」 など。
なにやら妙な単語が続きます…。
そして、緊迫した雰囲気の中スタートするゲーム本編。
「Pixies」
「NURSERYCRYME」
「AliceInChains」
ここでも謎の単語が登場。でもまだまだ序の口です。
主人公の秘書「霧島香織」は何故だか「でちゅ」「まちゅ」口調。
普通ならこういう個性は強烈にプッシュしてしかるべきなのですが、本作では実にそっけない。
さも当然、何を今さら、と言わんばかりに、一言、二言の説明だけでサラッと流してしまいます。
シリアスな雰囲気のなかに、腰のくだけたユルぃ設定の入るのが本作の特徴です。
主人公の宿敵が「最強の"土方"」というのも強烈です。
しかも説明をするときの背景絵には、ツルハシを引っさげた厳ついマッチョの絵が荒々しいタッチで描かれているのだから堪りません。
良いか悪いかは別として、「とにかく凄い!何か分からんけど凄いぞこれは!!」と勘違いさせられるような暴走っぷりといいますか、ぶっとび具合があるんです。
「何だ何だ?何が起こるの?」と、出足で一気に注目させることに関しては、ズバ抜けて優れた作品だと思いました。
他にも、目の見えない「隷」が平然と建物の中を歩き回って読書をしたり。
片足義足の主人公が歩きづらそうなのは最初だけで、後は普通に歩いて走っていたり。
無茶苦茶なんだけど不思議と気にならない、妙に説得力のある作品です。
総評 B
面白いんだけどA評価にはできない新人賞的な作品です。
内に秘めた創作のエネルギーはすごく伝わってくるんだけど、粗が多いのが玉にキズ。
日本語のおかしいテキストが結構見つかったり、全編を通じてみたときに雰囲気が若干バラついていたり。
話が途中で終わったみたいになっているシナリオがあったのもいけませんね。
面白いのは面白いけど、先がまだまだ気になる状態で終わられてしまっては、やはりストレスを感じます。
余談
本作、実は立派な泣きゲーだと思うのですが、設定の奇抜さや「燃える展開」の風評が先行してあまりそういうイメージはないみたいです。
リニア、冬葉、かずさ、鈴希、霧島。
5人のヒロイン中「リニア」と「冬葉」のシナリオは泣きゲーとして見ても、結構よくできていると思います。
時間の流れを感じさせるリニアのシナリオと、素直で優しく美しい冬葉のシナリオ。
主人公達の幸せな結末を見て、ニヤリ、ホロリ。
ただ悲しいだけじゃなくて。
笑いながら泣けるところに作者の心を感じます。